はじめに──「自分には無理」と思っていた、あの頃の自分へ
僕は今、38歳のサラリーマンです。家族がいて、ごく普通の毎日を送っています。ただ一つ、20代の頃の自分に教えてあげたいことがあるとすれば、それは僕の現在の資産状況についてかもしれません。
金融資産、企業型の確定拠出年金、そしてコツコツ育ててきた高配当株などを合わせると、資産は4千万円になります。もちろん、親からの相続があったわけでも、宝くじが当たったわけでも、起業して一発当てたわけでもありません。
信じられないかもしれませんが、20代の頃の僕は、お金に対して驚くほど無頓着でした。「まあ、真面目に働いていれば、いつの間にか貯まっているだろう」と。そんな楽観的な未来予想図は、30代になってすぐに崩れ去りました。
住宅ローン、子どもの教育費、そして忍び寄る「老後」という二文字。現実の重圧がリアルに迫ってきたとき、僕は初めて気づいたのです。
「このままじゃ、何も変わらない。いや、むしろジリ貧になるだけだ」
そこが、僕の本当のスタート地点でした。恐怖にも似た感情をバネに行動を変え、試行錯誤を繰り返した結果、今、僕の手元には「お金の心配から解放される自由」と「人生を自分で選べる選択肢」があります。
今日は、特別な才能や強運がなくても、誰にでも真似できる「再現性のある資産形成の方法」について、僕の経験のすべてをお話しします。もし、かつての僕のように、漠然とした不安の中で立ち尽くしているなら、この記事があなたの「最初の一歩」になるはずです。
1. 前提:なぜ、この方法は「再現可能」だと言い切れるのか?
僕が実践してきた資産形成法がなぜ再現可能なのか。その理由は、僕自身が特別な人間ではないからです。
- 高年収ではありません。 年収1000万円程度と聞くと「多いじゃないか」と思うかもしれませんが、都内で家族と暮らすには、決して贅沢ができる水準ではありません。
- 投資の才能もありません。 デイトレードで一攫千金を狙うようなセンスはなく、基本は王道のインデックス投資と高配当株への長期投資です。
では、何が違ったのか? それは、才能やセンスに頼るのではなく、「仕組み化」と「価値観の明確化」という2つの軸で、お金と向き合う「習慣と意思決定のフレームワーク」を徹底的に整えたこと。これに尽きます。
だからこそ、この方法は誰にでも再現可能なのです。
2. 資産を築けた「5つの再現性あるルール」
僕が資産を築く上で、自分に課してきたルールは5つだけです。どれもシンプルですが、非常に強力です。
ルール①:「収入の増加」と「生活水準」を切り離す
資産形成で多くの人がつまずく最大の落とし穴。それは「パーキンソンの法則」です。人は、収入が増えれば増えただけ、支出も増やしてしまう生き物なのです。
僕は新卒で社会人になったときから、この法則に抗うことを決意しました。年収が上がっても、昇進しても、家賃や通信費といった毎月の固定費は可能な限り据え置く。これを徹底しました。
年収が500万円から600万円に上がったとき、多くの同僚はより広い部屋に引っ越したり、車を買い替えたりしていました。もちろん、その喜びは痛いほどわかります。しかし、僕はそこでグッとこらえ、家賃の上限は「手取りの25%以内」というマイルールを死守しました。
その結果、何が起きたか。
「年収UP分 = 貯蓄・投資可能額UP分」
この単純な方程式が、僕の資産形成のエンジンになりました。ボーナスは最初から「ないもの」として月々の給料だけで生活を設計し、余計な保険(学資保険や個人年金保険など)には頼らず、本当に必要な掛け捨ての医療・がん保険だけに絞る。この「固定費ミニマム戦略」が、最初の、そして最も重要な一歩でした。
ルール②:「貯める」のではなく「先に投資する」
「余ったら貯金しよう」は、永遠にお金が貯まらない人の思考法です。資産形成の最も強力な味方は、「自動化」であり、「強制力」です。
僕の給料明細には、僕が意識する前に、すでにお金が投資に回る仕組みが組み込まれています。
- 企業型確定拠出年金(DC):給与天引きで、有無を言わさず老後資金が積み立てられていく。
- NISA(つみたて投資枠):口座に給料が振り込まれたら、即座に一定額が自動で投資信託の買い付けに回るよう設定。
- 高配当株投資:得られた配当金は、さらに株を買い増す「再投資」の原資にするか、後述する「自分を喜ばせるため」の予算として、心置きなく使う。
ポイントは、投資を「意思決定」の対象から外し、「呼吸をするのと同じくらい当たり前の習慣」にしてしまうこと。給料日には、すでに投資に回った後のお金が口座に残っている。だから、罪悪感なくその範囲で生活すればいい。この「最初からなかったもの」として扱う仕組みこそが、感情の波に左右されず、長期的な資産形成を可能にするのです。
ルール③:「欲望」は否定せず、「戦略的」に満たす
誤解しないでほしいのですが、僕は節約至上主義の守銭奴ではありません。むしろ、欲望には忠実な方です。美味しいものを食べること、心揺さぶられるライブへ行くこと、知らない土地を旅すること、そして、自分の根源的な欲求を満たすことにも、しっかりとお金を使います。
ただし、そこには絶対的なルールがあります。それは「欲望の予算化」と「満足度の最大化」です。
僕は毎月、「人生を楽しむための聖域予算」を明確に設定しています。この範囲内であれば、何にどう使おうと一切自分を責めない。むしろ、積極的に使うことを自分に課しています。
節約とは、我慢することではありません。自分にとって「お金をかけるべき領域(価値観のど真ん中)」と「そうでない領域」を見極める作業です。僕にとっては、食・性・睡眠といった本能的な欲求や、心を震わせる「体験」への投資こそが、人生を豊かにする最高の支出なのです。
この「戦略的浪費」があるからこそ、日々の節制が苦にならず、むしろ資産形成そのものがゲームのように楽しくなるのです。
ルール④:最強の投資先は「自分自身」である
資産形成には、2つの側面があります。一つは「お金(金融資産)を増やす」こと。そしてもう一つが「自分の価値(人的資本)を高める」ことです。後者を無視して、本当の豊かさは手に入りません。
僕は、自分自身への投資を惜しまないようにしています。
- 学びへの投資:現在、週末を利用してビジネススクール(MBA)に通っています。それは、単に学位が欲しいからではありません。論理的思考力、多様な視点、そして志の高い仲間との出会いが、お金には換えられない無形資産になると信じているからです。
- 健康への投資:僕は毎月5万円以上を「健康資産」の積み立てと称して、ジム、整体、サプリメントなどに投資しています。38歳にもなると、体は正直です。最高のパフォーマンスを維持し、将来の医療費を抑制するためには、この「予防投資」が最も効率的だと考えています。
健康な身体、錆びつかない知性、そして尽きない好奇心。これらが生み出す「成長している」という実感は、銀行口座の残高が増える喜びよりも、はるかに強く自己肯定感を高めてくれます。
ルール⑤:「人生の地図」を描き、現在地を確認する
そもそも、なぜ僕たちは資産を形成するのでしょうか。それは、「自分らしく生きる自由」を手に入れるためです。その最終目的を見失ってしまえば、資産形成は単なる数字集めの虚しい作業に成り下がります。
だからこそ、僕は定期的に「人生の地図」を描き、更新することを習慣にしています。
- 「45歳で一度立ち止まる」という中期目標:完全なリタイア(FIRE)を目指しているわけではありません。しかし、45歳になったとき、会社に依存せずとも生きていける経済的基盤を確立し、「働く場所、時間、内容を自分で決められる自由(サイドFIRE)」を手に入れる。この具体的なマイルストーンが、日々の行動のブレをなくしてくれます。
- 価値観の棚卸し:半年に一度、「自分は何を手に入れたくて、そのために何を手放せるのか」を自問自答します。この作業を通じて、人生の主語が「会社」や「社会」ではなく、常に「自分」であることを確認するのです。
資産額は、あくまで目的地にたどり着くための燃料にすぎません。自分の人生という船が、どこへ向かっているのか。それを常に意識することこそが、航海の最大の羅針盤となるのです。
3. これから始めたいあなたへ:まず、今日からやるべき「3つのこと」
ここまで読んで、「自分にもできるかもしれない」と少しでも思ってくれたなら、とても嬉しいです。そんなあなたに、今日から始められる具体的なアクションプランを3つだけ提案します。
- 家計の全体像を把握する まずは、自分の収入と支出を正確に知ることから。マネーフォワードMEのような家計簿アプリを使えば、10分で終わります。「固定費」「変動費」、そして「将来への投資(NISAやDCなど)」に色分けしてみましょう。現実を直視することが、すべての始まりです。
- あなたの「価値観マップ」を作ってみる 先月の支出を振り返り、一つ一つの項目に「満足度」を10点満点でつけてみてください。「満足度が高いのに、あまりお金をかけていない領域」と「満足度が低いのに、なぜかお金を使っている領域」が見えてくるはずです。それが、あなたのお金をかけるべき場所と、そうでない場所のヒントになります。
- 「自動で増える仕組み」を1つだけ導入する いきなり大きな金額で始める必要はありません。証券口座を開き、毎月3万円でもいいので、NISAのつみたて投資枠で「自動積立」を設定してみましょう。その3万円は、10年後には複利の力で、あなたが想像する以上の金額に育っている可能性が高いです。
おわりに──“自分を大切にすること”が、最大の資産形成
結局のところ、僕がやってきたのは、特別なことではありません。 再現性のある習慣を、ただ粛々と、感情を排して積み上げてきた。 それだけです。
しかし、その地味な積み上げが、僕に「自由」という、何物にも代えがたい人生の土台を与えてくれました。
お金は、僕たちの人生を豊かにするための、強力なツールです。そして、そのツールとどう向き合うかは、「自分をどれだけ大切にできるか」という問いと同義なのだと、僕は思います。
あなたも、きっとできます。 もし、あの頃の僕と同じように「何かを変えたい」と心から願っているのなら、今日、この瞬間から、“たった一つ”でもいい、行動を起こしてみませんか? その一歩が、10年後のあなたを、間違いなく変えるはずです。