40歳。人生の折り返し地点。 多くの人は、家庭や会社での責任が増し、新しい挑戦よりも「守り」に入る時期かもしれない。失うものが増え、変化を恐れるようになる。
「このままでいいのか?」
ふと、そんな問いが胸をよぎる。しかし、日々の忙しさに紛れ、その問いから目をそむけてはいないだろうか。
僕は、40代からの10年間を、人生で最もエキサイティングな「自分を育てるプロジェクト」の期間と位置づけることにした。それは、何かを達成するための「ToDoリスト」ではない。誰かに見せるためのものでもなく、ただひたすらに「自分らしさを保ち、深めるための実践計画」だ。
前回の記事では、僕の「お金の哲学」について語った。今回は、その哲学を土台に、これからの10年で僕が実践したいと考えている、少し変わった「やりたいことリスト」を共有したいと思う。
これは、僕という人間を使った壮大な実験の記録だ。
1.【自己深化】内なる静寂に潜り、本質的な自分に還る
現代社会は、情報とノイズに満ち溢れている。放っておけば、僕たちは他人の価値観やどうでもいいニュースに思考を乗っ取られてしまう。だからこそ、僕は意図的に「自分とだけ向き合う時間」を聖域として確保する。
- 月1回のデジタル断ち:スマホの電源を切り、サウナで汗を流し、自然の中を歩き、ひたすら本を読む。そして、感じたこと、考えたことをノートに書き留める。自分をRPGのキャラクターのように客観視し、「今、どんな状態で、何を考えているのか」を言語化する作業は、人生の羅針盤を調整するために不可欠だ。
- 年1回の「死について考える日」:死は、生を最も輝かせる最高のスパイスだ。この日だけは、自分がいつか死ぬという事実と真剣に向き合う。エンディングノートを更新し、終末医療について考え、大切な人に伝えたいことを整理する。死を具体的に意識することで、「今、本当にやるべきこと」がクリアになる。
- 哲学書との対話:シェリー・ケーガンの『死とはなにか』のような直接的なものから、スピノザや老子といった古典まで。先人たちが生涯をかけて紡いだ思索に触れることで、自分の人生観に深みと強度を与えたい。
2.【身体と快楽】欲を肯定し、賢く満たすことで心身を最適化する
「欲」は、しばしば否定的なものとして扱われる。しかし、それは紛れもなく人間のエネルギーの源泉だ。問題なのは欲そのものではなく、それに振り回されること。だから僕は、欲を否定するのではなく、賢く付き合うための「自己統制プロジェクト」として捉えている。
- 週末の快楽ルーティン:ジムで身体をいじめ、カラオケで大声を出し、温浴施設で心身を解放する。この一連の行為は、僕にとって最高の精神安定剤であり、自己肯定感を高めるための儀式だ。
- 性の自己メンテナンス:人間にとって根源的で自然な欲求。これを無視したり、罪悪感を抱いたりするのではなく、自分なりのルールを設けて健全に満たす。それは妄想力や言語化能力をも鍛える、極めて知的な自己探求の営みだと考えている。
- 身体への投資:精力、睡眠、筋力。これらは40代以降のパフォーマンスを左右する三種の神器だ。最適なサプリメント、身体に合った枕、質の良い食事、定期的な整体。これらへの投資は、未来の自分への最高のリターンを生むと確信している。
3.【知的・創造】消費する側から、考え、生み出す側へ
インプットだけを続けていても、思考は深まらない。自分の言葉で語り、何かを創造するプロセスを経て初めて、知識は知恵に変わる。
- 日々のブログ執筆:PV数を追いかけるのではない。ただ、「かつての自分のような誰か一人」に深く届けばいい。その一心で、自分の哲学や価値観を言語化し続ける。この行為は、何よりも自分自身の思考を整理するために役立つ。
- 小さな電子書籍の出版:50歳になるまでに、「誰にも縛られずに、生き切る技術」といったテーマで、僕なりの人生哲学を小さな電子書籍にまとめてみたい。それは、僕が生きてきた証であり、思考の結晶だ。
- 専門外の読書:月1冊、あえて自分の専門とは全く違う分野の本を読む。美術、都市計画、農業、テクノロジー哲学…。一見無関係な知識が、頭の中で化学反応を起こし、予期せぬ発見や創造の種をもたらしてくれる。
4.【他者との関わり】広く浅くから、狭く深く静かな関係へ
年齢を重ねるにつれ、多くの人と繋がることの価値は相対的に下がっていくように感じる。むしろ、本当に大切な人と、どれだけ深く静かに関われるか。それが人生の豊かさを決めると信じている。
- 「誰か一人」とだけ深く繋がる年:1年間、意識して「たった一人」と深く向き合ってみる。それは妻かもしれないし、子どもかもしれない。あるいは、行きつけの店の店主や、学びの場で出会った友人かもしれない。多くの関係性を維持しようとするエネルギーを一点に集中させ、関係性の深淵を覗いてみたい。
- “卒親”設計:子どもがいつか自立して離れていくのは、自然なこと。その日に向けて、親として「手を放す準備」を始める。依存的な関係ではなく、一人の自律した個人としてリスペクトできる関係を築くための、精神的な距離の取り方を模索する。
- 価値観が近い人とのオフラインでの対話:ビジネススクールの仲間や、ライブ仲間。年に一度でいい、利害関係のない場所で、価値観の近い人たちと本音で語り合う場を持つ。それは魂の栄養補給だ。
5.【外界・環境】コンクリートから離れ、自然に還る準備
僕の価値観の根底には、「自然とともにある生活」への強い憧れがある。都会の刺激的な暮らしも面白いが、人生の後半は、もっと穏やかで調和の取れた環境に身を置きたい。
- 週末農業や自然活動への参加:将来の移住やセカンドライフに向けた試金石として、土に触れる経験を積む。作物を育てるという行為は、人間の原点に立ち返らせてくれる。
- 「半移住」候補地探し:5年以内に、現在の生活を維持しながら週末だけ過ごせるような「半移住」の候補地を3つ見つけたい。自然の中で、完全に孤独と戯れる時間を持つことが、僕の精神をリセットしてくれる。
6.【仕事・お金】「自由」のための稼ぎ方と、納得できる使い方
僕にとって仕事は「壮大な暇つぶし」だが、それは経済的な基盤があってこその言葉だ。自由を確保するための手段として、仕事とお金には真剣に向き合う。
- 会社内での挑戦:サラリーマンでいる間も、決して飼いならされはしない。より自律性と専門性が求められる部署への異動を目指し、自分の市場価値を高め続ける。組織を使いこなし、いつでも飛び立てる準備をしておく。
- FIRE計画の見直し:いつ、どのタイミングで「稼ぎ切った」と判断し、組織を離れるか。その出口戦略を常に見直し、更新し続ける。
- 「配当金だけで贅沢する月」:年に一度、配当金からの収入だけで、罪悪感なく思い切り遊ぶ月を設ける。これは、お金を「使う」ことへの筋肉を鍛えるための練習だ。稼ぐだけでなく、気持ちよく使うことで、人生の幸福度は最大化される。
まとめ:これは、自分を生き切るための「実践計画」
ここに挙げたリストは、一見するとバラバラに見えるかもしれない。 だが、すべては「自分は、誰にも縛られずに、何をして生きていたいのか?」という根源的な問いに繋がっている。
これらは、人生を消費するためのリストではない。 人に縛られず、自分の内なる欲と理性を調和させ、孤独を慈しみ、自然に寄り添い、ゆるやかに死を受け入れながら、自分を生き切るための「実践計画」なのだ。
人生は、40代からが本番だ。 あなたも、あなただけの「自分を育てるプロジェクト」を始めてみてはどうだろうか。