高配当株投資

【VYM/SPYD/HDV】米国高配当ETF御三家、結局どれがいい?あなたに合った“正解”の選び方を解説

「新NISAで、配当金生活の第一歩を踏み出したい」 「インデックス投資に加えて、定期的にお金がもらえる仕組みが欲しい」

そんな思いから、多くの人が「米国高配当株ETF」の世界に足を踏み入れています。その中でも、日本の個人投資家が最終的にたどり着く選択肢は、ほとんど3つに集約されると言っても過言ではありません。

それが、VYM、SPYD、HDV。 いつしか「御三家」と呼ばれるようになった、米国高配当株ETF界の巨人たちです。

しかし、いざ選ぼうとすると、こんな壁にぶつかります。 「どれも魅力的だけど、一体何が違うんだろう?」 「利回りが高いSPYDがいいのか、安定感のVYMか、質のHDVか…」 「自分には、結局どれが一番合っているんだろう?」

かつての僕も、全く同じ場所で頭を悩ませました。そして、様々な情報を吟味し、自分なりの結論にたどり着きました。

この記事では、この御三家それぞれの「個性」を、誰にでも分かるように徹底的に解剖します。そして、単に優劣をつけるのではなく、あなたの投資目的や性格に合った「最高のパートナー」を見つけるための、具体的な判断基準を提示します。

この記事を読み終える頃には、あなたはもう迷うことなく、自信を持って自分だけの「正解」を選び取れるようになっているはずです。

1. まずは結論から。御三家のプロフィール比較

詳細な解説に入る前に、まずは3つのETFがどんな個性を持っているのか、一覧表で比較してみましょう。彼らの「性格」が一言で分かるようにまとめてみました。

項目VYMSPYDHDV
正式名称バンガード・米国高配当株式ETFSPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETFiシェアーズ・コア米国高配当株ETF
連動指数FTSEハイディビデンド・イールド指数S&P500高配当指数モーニングスター配当フォーカス指数
構成銘柄数約460銘柄約80銘柄約75銘柄
経費率0.06%0.07%0.08%
分配金利回り3.0%前後4.0%前後3.5%前後
性格(一言で)バランスの取れた王道・優等生利回り特化の攻撃型スナイパー財務優良な鉄壁のディフェンダー

※銘柄数や利回りは記事執筆時点の目安です。

この表だけでも、三者の性格の違いがぼんやりと見えてきたのではないでしょうか。 VYMは銘柄数が圧倒的に多く、SPYDは利回りが頭一つ抜けていて、HDVは銘柄数が少なく厳選されている感じがしますね。

それでは、一体なぜこのような違いが生まれるのか。それぞれの「銘柄選定ルール」という、設計思想の核心に迫っていきましょう。

2. 各ETFの「個性」を徹底解剖

① VYM:すべてを兼ね備えた「王道の優等生」

VYMは、一言で言えば「最もバランスが良く、安定的で、どんな人にも勧めやすい優等生」です。

その秘密は、約460銘柄という圧倒的な分散にあります。VYMは、REITを除く全米の大型株の中から、「これから配当利回りが高くなることが“予想”される」銘柄を、幅広く組み入れています。

ポイントは、「今、利回りが高い」だけでなく、「これから高くなる予想」の銘柄も含む点です。これにより、一時的に株価が下落して利回りが高くなっただけの「罠銘柄(バリュートラップ)」を避けつつ、安定した成長が見込める優良企業を多く含めることができます。

  • メリット: 分散が効いているため、特定のセクターの不調に強く、株価の変動が比較的マイルド。暴落時にも強いディフェンス力を発揮しやすい。
  • デメリット: SPYDやHDVに比べると、分配金利回りが若干低くなる傾向がある。

VYMは、高配当投資の「コア(核)」として、まず最初に持つべきETFと言えるかもしれません。大きな失敗をしにくく、精神的な安定を保ちながら、長期的に付き合っていける。まさに「王道」の名にふさわしい存在です。

② SPYD:利回りこそ正義!「一点突破のスナイパー」

SPYDは、「とにかく高い分配金利回りが欲しい!」という欲求に、最もストレートに応えてくれるETFです。

その戦略は、極めてシンプルかつ大胆。米国の代表的な株価指数であるS&P500の中から、単純に配当利回りが高い順に、上位80銘柄を均等に組み入れるだけ。

難しい財務分析などは行わず、「高利回り」という一点のみを狙い撃ちする、まさにスナイパーのようなETFです。結果として、不動産や金融、公共事業といった、伝統的に利回りが高いセクターの比率が高くなる傾向があります。

  • メリット: 御三家の中で、最も高い分配金利回りを期待できる。定期的に受け取るキャッシュフローを最大化したい人には、最高の選択肢となる。
  • デメリット: 景気敏感株や、金利の変動に弱いセクターに構成が偏りやすく、株価の変動(ボラティリティ)が大きくなりがち。暴落時の下落率も、VYMより大きくなる可能性がある。

SPYDは、その高い利回りと引き換えに、相応のリスクも内包しています。その特性を理解した上で、ポートフォリオの「スパイス」として活用できる、中〜上級者向けのETFと言えるでしょう。

③ HDV:質実剛健、「鉄壁のディフェンダー」

HDVは、「ただ利回りが高いだけでなく、財務的に健全で、持続的に配当を出し続けられる“質の高い”企業」に投資したい、というニーズに応えるETFです。

HDVの銘柄選定は、非常にユニークです。まず、米国の優良企業群の中から、財務が健全で、かつ競合他社に対する優位性(経済的な堀=ワイドモート)を持つと評価された企業を選び出します。そして、その中から、配当利回りの高い75銘柄を組み入れます。

つまり、「財務健全性」という厳しいフィルターをクリアした、エリート企業集団なのです。

  • メリット: 景気後退期でも配当を維持しやすい、質の高い企業に集中投資できる。減配リスクを極力抑えたい、堅実な投資家にとって安心感が大きい。
  • デメリット: 銘柄選定の過程で、ディフェンシブなセクター(ヘルスケア、エネルギー、生活必需品など)に偏る傾向がある。ITなどの成長セクターが少なくなりがちで、株価の大きな成長は期待しにくい。

HDVは、「倒産しにくく、配当を長く出し続けてくれそうな、安心できる企業だけに投資したい」という、保守的でディフェンスを重視する投資家に、最高の安心感を与えてくれます。

3. あなたはどのタイプ?目的別「最適解」の選び方

さて、三者の個性を理解したところで、いよいよあなたに合ったETFを選ぶ番です。以下の3つのタイプから、ご自身が最も近いものを選んでみてください。

  • 【安定志向の初心者・コア資産タイプ】 → VYMがおすすめ 「高配当投資は初めてで、大きな失敗はしたくない」「利回りだけでなく、株価の安定的な成長も狙いたい」「ポートフォリオの“中心”として、長く付き合えるものが欲しい」 …こんな風に考えるあなたには、圧倒的な分散力と安定感を誇るVYMが、最高のパートナーになるでしょう。
  • 【キャッシュフロー最大化・リスク許容タイプ】 → SPYDがおすすめ 「とにかく、手元に入ってくる分配金の額を最大化したい」「多少の株価の変動は気にしない。それよりも高い利回りが魅力だ」「自分のリスク許容度は高い方だと思う」 …インカム(分配金)を何よりも重視するあなたには、利回り特化型のSPYDが、最も満足度の高い結果をもたらしてくれる可能性があります。
  • 【品質・安心感重視・ディフェンスタイプ】 → HDVがおすすめ 「目先の利回りよりも、企業の“質”を重視したい」「減配リスクが何よりも怖い」「不況時にも安心して見ていられるポートフォリオを組みたい」 …財務の健全性と配当の持続性を最優先するあなたには、選び抜かれたエリート集団であるHDVが、盤石の安心感を与えてくれるはずです。

4. なぜ僕は「VYM」を選び続けているのか

最後に、僕自身の話をさせてください。何を隠そう、僕のポートフォリオの高配当株の主軸は、今も昔もVYMです。

SPYDの高い利回りも、HDVの質の高さも、非常に魅力的です。しかし、それでも僕がVYMを選ぶのには、明確な理由があります。

それは、僕の投資全体の「バランス」を考えているからです。

僕の資産のコアは、S&P500やオルカンといった、市場全体の成長を狙うインデックスファンドです。こちらは、将来の大きな資産拡大を担う「攻撃の主力」です。

とすると、僕が高配当株に求める役割は、「守備の要」であり、「精神的な安定剤」です。暴落時でも、ポートフォリオ全体が大きく崩れるのを防ぎ、安定したキャッシュフローを生み出し続けてくれること。その役割を、最も高いレベルで、かつ低コストで実現してくれるのが、約460銘柄に分散されたVYMだと結論づけたのです。

僕にとってVYMは、最高の利回りをもたらすスター選手ではありません。しかし、どんな試合でも、黙々と自分の役割を果たし、チーム全体を勝利に導いてくれる、最も信頼のおけるキャプテンのような存在なのです。

まとめ:最高のパートナーは、自分で見つけるもの

VYM、SPYD、HDV。それぞれに素晴らしい個性と哲学があり、どれが絶対的に優れている、というものはありません。

大切なのは、それぞれの違いを正しく理解し、「自分は、投資に何を求めるのか?」という自分自身の心と向き合うことです。

この記事が、あなたが最高の投資パートナーと出会うための、信頼できる「地図」となれば、これほど嬉しいことはありません。ぜひ、じっくりと時間をかけて、あなただけの「正解」を見つけ出してください。

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