
ようこそ、屍の山へ
「好きなことを書いて、自由に生きていく」 「ブログで月収100万円を達成した方法」
ネットを開けば、そんな夢のような言葉たちが、甘い蜜のように僕たちを誘惑する。かつての僕もまた、その蜜に誘われた、哀れな一匹の虫だった。
「自分の経験や考えが、誰かの役に立つかもしれない」 「うまくいけば、副収入にだってなるかもしれない」
淡い期待を胸に、サーバーを契約し、ドメインを取得し、このブログを立ち上げた。そこには、希望しかなかった。
こんにちは。この廃墟のようなブログの管理人です。 先に結論から言おう。ブログ運営は、あなたが想像している100倍、地味で、孤独で、そして、めっちゃ辛い。
この記事は、今まさにブログで一旗揚げようと夢見ているあなた、そして、ブログを始めてみたものの、誰にも読まれない現実に心を折られかけている、かつての僕のようなあなたに向けて書いている。
僕がこれから語るのは、成功法則ではない。むしろ、その対極にある「失敗の現実」だ。このブログが、その何よりの証拠。見ての通り、更新はたびたび止まっている。そして正直に告白すれば、開設してから今まで、サーバー代やドメイン代といった初期投資さえ、まったく回収できていない。常に赤字だ。
それでもいい、という覚悟があるのなら、この先を読み進めてほしい。これは、屍の山の中からお送りする、一人の挫折者からの、あまりにリアルな現場レポートだ。
第1章:なぜ、ブログ運営は「地獄」なのか?あなたが直面する3つの現実
なぜ、あれほど希望に満ちていたブログ運営が、いつの間にか苦行に変わってしまうのか。そこには、初心者が必ず直面する、冷徹な3つの現実がある。
現実1:あなたが飛び込むのは、血の海(レッドオーシャン)である
まず、認識を改めてほしい。あなたが「これなら書けるかも」と思うジャンルには、すでに100%の確率で、強力な先駆者たちが存在している。
企業の威信をかけて運営される、専門家集団によるオウンドメディア。何年も前から膨大な記事を積み上げ、Googleから絶大な信頼を得ているトップブロガーたち。SEO(検索エンジン最適化)を知り尽くしたプロのアフィリエイター。
彼らと同じ土俵で、昨日今日ブログを始めたばかりの素人が、「好きなことを、好きなように書くだけ」で戦えるわけがないのだ。それは、竹槍で戦車に挑むようなもの。あなたが渾身の力で書き上げた記事は、彼らの巨大なコンテンツの前に、検索結果の遥か彼方、誰の目にも触れない深海へと沈んでいく。ブログとは、そういう場所なのだ。
現実2:誰も、あなたの記事を読んでいない
ブログを始めて、最初に心を折られるのがこれだ。何時間もかけてリサーチし、自分の言葉を尽くして書き上げた渾身の記事。公開ボタンを押す指は、期待に震える。
そして、Googleアナリティクス(アクセス解析ツール)を開く。
「今日のPV数:1」
その貴重な「1」は、まぎれもなく自分自身だ。 翌日も、その次の日も、ユーザー数は「1」か「2」。その数字は、まるで無人の荒野に向かって、たった一人で叫び続けているような、圧倒的な孤独感をあなたに突きつける。
SNSでシェアしても、いいねが数個つけば御の字。コメントなんて、まず付かない。誰にも読まれず、誰からも反応がない。そんな状況で、情熱を維持し続けることが、どれほど困難なことか。それは、経験した者にしか分からない、静かで深い絶望なのだ。
現実3:サーバー代という名の「静かな出血」
ブログは、無料で始められるものもある。しかし、「本気でやるぞ」と意気込むほど、僕たちは有料のサーバーを借り、独自のドメインを取得する。少し見栄えを良くしたくて、有料のテーマを買ったりもする。
これらはすべて、経費だ。 そして、PV数がゼロでも、収益がゼロでも、この経費は容赦なく毎年、あるいは毎月、あなたの銀行口座から引き落とされていく。
僕もそうだ。このブログのサーバー費用を、何年も払い続けている。それはまるで、止血できない傷口から、少しずつ血が流れ出しているような感覚に近い。収益化どころか、初期投資の回収さえ夢のまた夢。お金を払って、孤独な苦行を続けている。それが、多くのブロガーが置かれている、あまりに滑稽で、あまりに悲しい現実なのだ。
第2章:最大の敵は「Google」でも「競合」でもない。それは「継続できない自分」だ
ここまで、ブログ運営を取り巻く外部環境の厳しさについて語ってきた。 しかし、本当の敵は、外にはいない。最大の敵、それは、「継続できない自分自身」だ。
ブログを辞めていく人の9割は、おそらく「継続できなかった」から辞めていく。ではなぜ、あれほど簡単そうに見える「続ける」という行為が、拷問のような苦行になるのか。
- ネタ切れの恐怖 最初は書きたいことが溢れている。しかし、10記事、20記事と書くうちに、それはあっという間に枯渇する。「次は何を書こう…」と、空っぽの頭でうんうん唸る時間は、地獄だ。
- 時間の捻出という物理的な壁 僕たちには本業があり、家族がいて、プライベートがある。その限られた時間の中から、ブログを書くためのまとまった時間を捻出するのは、並大抵のことではない。仕事で疲れた夜、休日の穏やかな午後、その時間を削って、誰にも読まれない記事を書き続ける。その行為の価値を、自分自身が見失いそうになる。
- 成果が出ないことへの焦りと虚無 3ヶ月、半年と続けても、PV数は2桁のまま。収益は缶ジュース1本分にも満たない。そんな現実に直面したとき、「自分は、一体何のためにこんなことをやっているんだろう」という、底なしの虚無感に襲われる。この虚無こそが、モチベーションという名のロウソクの火を、静かに、そして確実に吹き消していくのだ。
このサイトの更新が、何度も、何ヶ月も止まっているのは、僕がこの「継続という名の地獄」との戦いに、何度も敗北してきたからに他ならない。そう考えると、何年も、毎日、淡々と記事を更新し続けているトップブロガーたちは、もはや超人としか思えない。ブログ運営に必要なのは、文章力やマーケティングスキル以前に、この苦行を続けられる「異常なまでの継続力」という、一つの才能なのだ。
第3章:では、なぜ僕はまだサーバー代を払い続けているのか
ここまで読んでくれたあなたは、こう思うかもしれない。 「そんなに辛いなら、さっさと辞めればいいのに」と。
まったくもって、その通りだ。経済合理性で考えれば、赤字を垂れ流すこのブログは、即刻閉鎖すべきだろう。 だが、それでも僕がサーバーの契約を更新し、この廃墟のような城を維持し続けているのには、いくつかの理由がある。
- 最高の「思考トレーニング」だから ブログを書くという行為は、自分の頭の中にある、混沌とした考えや感情を、言葉という形に落とし込み、論理的に再構築する作業だ。このプロセスは、間違いなく僕の思考を鍛えてくれた。誰かに何かを説明するとき、会議で意見を述べるとき、ブログで培った「言語化能力」は、本業にも確実に活きている。
- いつか「世界のどこかの誰か一人」に届けばいい、という願い 月収100万円なんて夢は、とうの昔に捨てた。しかし、「僕の失敗談や、僕が感じた痛みが、かつての僕と同じように悩んでいる、世界のどこかの誰か一人の役に立つかもしれない」という、ささやかな願いは捨てきれないでいる。その誰か一人に届けば、この赤字と苦行は、少しだけ報われる気がするのだ。
- ここは、僕だけの「城」だから たとえボロボロで、誰も訪れない廃墟だとしても、このブログは、僕が作り上げた、僕だけの城だ。SNSのように、プラットフォームの気まぐれで全てが消え去ることはない。僕がサーバー代を払い続ける限り、この城はここにあり続ける。そのささやかな所有感と愛着が、僕に「解約」のボタンを押すことを躊躇させるのだ。
無心で楽しみつつ続けることが重要
ということで、僕はこのブログを続けていくつもりだ。
途中に中断もするだろう。現に何回も中断してきた。しかし、その中で書きたいことや体験したことが溜まってきた段階で吐き出すという行為をする場として適切に使っていくつもりだ。
誰の役に立たなくても良い、稼げなくても良い、完全に自己満足のために続けていく。
そんなクソみたいなブログだが、これを面白いと思ってくれる、参考になると思ってくれる、そんな人に届けていきたい。
おそらく今月で200記事を超えてくるだろうが、それでも十分には稼げないだろう。稼げなくても良い。なぜなら本業で十分に稼げているから。本当に暇つぶし程度に続けていく、何も考えず続けていく、その先にこそ成果があると信じて続けていくつもりだ。