その“作業”、いつまで、続けるつもりですか？
「新NISAの非課税枠1800万円を、一日でも早く、埋める」 このスローガンは、現代の資産形成において、一つの絶対的な正義となった。多くの人が、そのゴールを目指して、日々の楽しみを我慢し、給与の大部分を、機械のように積立投資に回している。
その行いは正しい。そして尊い。 私もまた、その道を歩み年間360万円という、非課税枠の上限を全力で埋め続けている同志の一人だ。
しかし、そのゴールテープがいよいよ現実のものとして射程圏内に入ってきた今。 私の心の中には、達成感とは少し違う、ある種の静かな「虚無感」が広がり始めている。
「この、ひたすら、数字を積み上げるだけの“作業”。これを、一体、いつまで、続けるのだろうか？」 「60歳になっても、僕は、まだこの積立を続けているのだろうか？」 「僕の人生は、ただ証券口座の残高を、増やすためだけにあるのだろうか？」
この記事は、そんな私が、なぜ「終わりのない、積立ゲーム」から、自らの意思で、降りることを決意したか。その、私なりの「出口戦略」と、人生の“本当の目的”についての、物語である。
僕が、設定した、具体的な“ゴール”
まず、私の、個人的な計画を、正直に、話したい。 私の、現在の金融資産は、約4000万円。新NISAの生涯非課税枠1800万円を、すべて埋め終えるのは、計算上「2028年」になる。
その時、私の総資産は、順調にいけば、おそらく5500万円を、超えているだろう。 そして、私は、その日をもって、給与所得からの「追加投資」を、完全に、やめると決めている。
なぜか。 その、5500万円という資産を、ただ、全世界株式インデックスファンド（オルカン）のような、堅実な商品で、運用し続けるだけで。たとえ、年利5%という、控えめなリターンを、仮定したとしても、私が、60歳になる頃には、それは、何もしなくても1億円を超える資産へと育っている可能性が極めて高いからだ。
これ以上、一体、何を、望むというのか。 これ以上、今の、貴重な時間を、犠牲にして、未来の、使いきれないほどの、お金を、貯め続けて、一体、何の意味が、あるというのだ。
“クリア後”の、虚しいゲーム - 終わりのない、資産形成の“罠”
想像してみてほしい。 私が、2028年以降も、これまで通り、給与所得からの、追加投資を、続けたとしたら。 私の、手元には、生活費を、差し引いても、毎年、数百万円という、莫大な「余剰資金」が、生まれることになる。
その、使い道のないお金をどうするか。 その、すべてを使い切るためには、毎年家族で世界一周旅行にでも行かなければならないだろう。 それは、それで、素晴らしい人生かもしれない。
しかし、そのために今の仕事、続けるのか？ それは、どこか本末転倒ではないだろうか。 僕たちの祖先が狩猟採集で生きていた時代。彼らはその日に食べる分だけの食料を手に入れれば満足した。なぜなら、それ以上の獲物は腐ってしまうからだ。
しかし、現代の僕たちは「お金」という、決して腐ることのない無限に保存可能な“食料”を手に入れてしまった。 その結果、僕たちの脳は、バグを起こし、「満足」を知らないまま、ただ、無限に、それを、貯め込み続けてしまうのだ。
資産の“本当の目的”とは何か - 君は、何のために、貯めているのか
この、虚しいゲームから、抜け出すために、僕たちが、本当に、向き合うべき問い。 それは、「いくら、貯めるか」ではない。 「何のために、貯めているのか」だ。
僕たちが、資産形成を、始めた、その、最初の動機を、思い出してほしい。 それは、「自由」を、手に入れるためでは、なかったか。
- 嫌な仕事を、辞める、自由。
- やりたいことに、挑戦する、自由。
- そして、お金の、心配から、解放される、精神的な、自由。
5500万円という資産は、私に、その、すべての自由を、与えてくれる、十分すぎるほどの、力を持つ。 それ以上の、富の追求は、もはや、自由を、拡大するのではなく、むしろ、僕を「もっと、もっと」という、新しい“欲望の奴隷”へと、変えてしまう、リスクさえ、はらんでいるのだ。
結論：君だけの“ゴールテープ”を、その手で、設置せよ
この記事で、私が、本当に、伝えたかったこと。 それは、すべての、投資戦略には、「始まり」だけでなく、明確な「終わり」が、必要だ、ということだ。
君もまた、君自身の、人生と、向き合い、自分だけの「ゴールテープ」を、その手で、設置すべきだ。
- それは、新NISAの、非課税枠を、埋め終えた時か。
- それは、君が、決めた、特定の「資産額」に、到達した時か。
- あるいは、君が、決めた、特定の「年齢」に、なった時か。
その、ゴールテープの、場所は、君自身が、決めていい。 しかし、重要なのは、「その、ゴールを、あらかじめ、決めておく」という、行為そのものなのだ。
終わりのない、ゲームは、ゲームではない。それは、牢獄だ。 君の、人生を、豊かにするための、資産形成が、いつしか、君自身を、縛り付ける、牢獄に、なってしまう前に。
さあ、君だけの、勝利条件を、定義しよう。 そして、その、輝かしいゴールテープを、切る、その日を、夢見て、今日からの、地味で、しかし、希望に満ちた、一歩を、再び、踏み出そうではないか。