高配当株投資

40歳になったら、“配当金の再投資”を、今すぐやめろ

投資の“常識”に、僕は、なぜ抗うのか

資産形成の道を歩み始めた者が、最初に学ぶべき聖なる教え。それは「複利の力を信じ、配当金はすべて再投資せよ」という、あまりにも有名で、そして、正しい福音です。

私もまた、その教えの忠実な信者でした。20代と30代という、人生の「資産形成期」において、私は給与所得から捻出した資金と、高配当株が生み出してくれた配当金のすべてを、一円残らず市場へと捧げ続けてきました。その規律と忍耐があったからこそ、今の私の、揺るぎない資産の土台は築かれています。

しかし、40歳という人生の折り返し地点が見えてきた今、私は一つの重大な決断を下そうとしています。それは、これまで信じて疑わなかった、あの神聖な福音に、自らの意思で背くという、一種の背教行為です。

私は、40歳になったその日から、配当金の再投資を、完全にやめると決めています。

そして、この決断こそが、私の人生の後半戦を、本当の意味で豊かにするための、最も合理的で、そして、賢明な「戦略」なのだと確信しています。

「貯める技術」と「使う技術」は、全く別のスキルである

なぜ、私は、あれほど効率的だと信じてきた「配当金の再投資」をやめるのでしょうか。その理由は、資産形成の旅路の果てに、「資産を築くスキル」と「その資産を使って、人生を豊かにするスキル」は、全く別の能力なのだと、痛感したからです。

20代、30代の私たちは、未来の安心のために、現在の欲望を抑え込む「規律」と「忍耐」を、必死で学びます。これは、資産を「貯める」ための、極めて重要な技術です。

しかし、その技術だけを、ひたすらに磨き続けた結果、私たちの心には、ある種の“バグ”が生まれます。それは、「お金を使うこと」そのものに、罪悪感を覚えてしまうという、奇妙な「節約OS」の暴走です。

このままでは、人生の最終盤に、莫大な資産を抱えながら、その使い方も分からず、ただ画面上の数字を眺めるだけの、空虚な老人になりかねない。私は、その未来を、何よりも恐れています。

人生の後半戦で、私たちに求められるのは、「貯める」技術ではありません。 それは、自分にとっての本当の「幸福」とは何かを深く理解し、そのために、お金というツールを的確に配分していく「知恵」と「勇気」、すなわち「使う」技術なのです。そして、その、あまりにも未熟なスキルを、意識的に訓練し始めるための、最高の転換点が、40歳という年齢なのだと、私は考えています。

僕が実践する「配当金=人生の“体験”予算」という新ルール

この「使う」技術を、訓練するために、私が自分自身に課した、新しいルール。それが、「配当金を、その年の“体験予算”として、強制的に、すべて使い切る」という計画です。

この計画が、合理的であると、私が断言する理由は、三つあります。

① 人生の“満足度”を、最大化するため

まず、大前提として、お金から得られる幸福度、すなわち「限界効用」は、年齢と共に、確実に、逓減していきます。 そして、旅や、学びといった「体験価値」から得られる幸福は、若く、そして、健康であればあるほど、最大化されます。75歳で、豪華客船に乗るよりも、45歳で、バックパックを背負って、未知の国を彷徨う方が、おそらく、人生に、より深い記憶を、刻み込むでしょう。

つまり、資産を、人生の幸福へと変換する「錬金術」にもまた、賞味期限があるのです。40歳という年齢は、その錬金術の効率が、まだ、十分に高いうちに、実践へと移行するための、絶妙なタイミングなのです。

②「金のなる木」の“果実”だけを、味わう、という“精神的な安全装置”

このルールの、もう一つの、重要な点。 それは、私が使うのは、あくまで、資産(金のなる木)が、生み出してくれた「果実(配当金)」だけであり、資産の「元本(木の幹)」には、一切、手をつけない、ということです。

この、「元本は、減らさない」という、シンプルな安全装置が、私の心の奥底にある「資産が、減ってしまう」という、根源的な恐怖を、完全に、無力化してくれます。これにより、私は、罪悪感なく、そして、心からの喜びをもって、お金を「使う」という、新しいスキルを、磨くことができるのです。

③“未来”のためから、“今”のためへ。モチベーションの、再設計

そして、このルールは、私の、資産形成へのモチベーションを、より、豊かで、持続可能なものへと、再設計してくれます。 これまでは、「未来の、漠然とした安心のため」という、少しだけ、霞がかった目標のために、投資を続けてきました。

しかし、これからは、違います。 「来年、この配当金で、どこへ旅に行こうか」 「次の、配当金が入ったら、妻と、あの、レストランへ行こう」

その、具体的で、心躍る「目標」が、日々の、退屈な積立投資に、鮮やかな彩りを、与えてくれる。 「使う」という、喜びが、さらなる「貯める」という、モチベーションを生み出す。この、完璧なサイクルこそが、私の、人生の後半戦を、力強く、駆動させていくのです。

結論:君は、いつまで、その“種”を、蒔き続けるのか

20代、30代の役割は、未来のために、ひたすらに、畑を耕し、種を蒔き続けることでした。それは、正しかった。

しかし、40歳になった、あなたの、新しい役割。 それは、その畑が、実らせてくれた、最初の「果実」を、感謝と共に、味わうことです。 その、果実の甘さを、知ること。それこそが、あなたに、これからも、その畑を、育み続ける、新しい、そして、より豊かな意味を、与えてくれます。

「配-当金の、再投資を、やめる」 それは、資産形成を、諦めることでは、決してありません。 それは、あなたの、資産形成の旅路が、「ただ、数字を、増やすだけの、無機質なゲーム」から、「人生を、味わい尽くすための、有機的な、サイクル」へと、進化した、何よりの“証”なのです。

さあ、あなたも、勇気を出して、その、最初の果実を、味わってみませんか。 あなたが、想像する以上に、その、未来の味は、甘く、そして、濃いはずですから。

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