支出の最適化

経理の僕が「家計簿」を“つけない”理由。 9割の人間が知らない、本当の“資産管理”とは

なぜ、あなたの「家計簿」は、3日と続かないのか?

「今年こそ、お金を貯めるぞ!」 そう決意したあなたが、まず、最初に手に取るもの。それは、おそらく「家計簿」だろう。 書店に並ぶ、美しい家計簿。あるいは、スマートフォンの中の、高機能な家計簿アプリ。

あなたは、誓う。「今日から、1円単位で、すべての支出を記録する」と。 しかし、その固い決意は、どうなるか。 最初の数日は、続くかもしれない。しかし、一週間も経つ頃には、レシートの山は、机の隅に追いやられ、アプリを開くことすら、億劫になる。そして、自己嫌悪と共に、こう、結論づけるのだ。 「自分は、なんて、ズボラなんだ…」と。

しかし、もし、僕が、あなたにこう告げたら、どう思うだろうか。 「家計簿が続かないのは、あなたの意志が弱いからではない。その“家計簿をつける”という行為そのものが、本質的に、非効率で、ほとんど意味のない、時代遅れの“作業”だからだ」と。

僕は、長年、企業の「経理」として、お金の流れを、プロとして、見続けてきた。 そして、その僕自身の、個人的な資産管理において、僕は、一度として、詳細な「家計簿」を、つけたことがない。

この記事は、そんな僕が、なぜ、家計簿を「不要」だと、断言するのか。その、企業の財務戦略にも通じる、極めて合理的な理由と、9割の人間が知らない、本当の意味での「資産管理」の本質についての、全記録である。

なぜ、「家計簿」は、致命的に“間違っている”のか

まず、会社という、巨大な組織の「お金の管理」を、想像してみてほしい。 何千、何万という社員が働く、大企業のCEOが、「営業部のA君が、今日、コンビニで買った、ボールペンの領収書は、どこだ!」などと、叫んでいるだろうか。 ありえない。そんなことをしていては、会社は、一瞬で、破綻する。

では、なぜ、僕たち個人は、その「ボールペンの領収書」レベルの、あまりにも些末な支出を、必死で、追いかけようとしてしまうのか。

僕たち経理のプロの世界には、「財務三表」と呼ばれる、三つの、重要な書類がある。 「損益計算書(P/L)」「貸借対照表(B/S)」「キャッシュフロー計算書(C/S)」。

この中で、君が、毎日つけている「家計簿」は、「損益計算書(P/L)」に、相当する。 日々の、収入(給料)と、費用(支出)を、記録し、その月に、いくら「利益(貯金)」が出たかを、計算するためのものだ。

しかし、プロの視点から言わせてもらえば、このP/Lだけを、毎日、必死で眺めることは、資産管理において、最も、優先順位の低い、非効率な行為なのだ。

①「高コスト・低インパクト」の罠

150円のコーヒー、800円のランチ。これらの、小さな支出を、毎日、記録し続けるという行為は、あなたの、貴重な「時間」と「精神的エネルギー」を、大量に、消耗させる。 しかし、その努力が、あなたの資産全体に与えるインパクトは、ごく、僅かだ。

② それは、「過去」への、後ろ向きな“反省会”

家計簿が、あなたに教えてくれるのは、「昨日、あなたが、何に、お金を使ったか」という、すでに、確定した「過去」だけだ。 それは、未来の行動を、戦略的にデザインする「計画書」ではなく、ただ、過去の過ちを、反省し、自己嫌悪に陥るための「反省文」に、なりがちだ。

③「意思決定疲れ」という、心の“消耗”

「このコーヒーは、“浪費”だろうか?」 「この本は、“自己投資”だろうか?」 すべての支出に、意味を問い、自分自身を、裁き続ける。その、精神的な消耗(意思決定疲れ)は、僕たちの心を、貧しくし、お金を使うという、本来、自由であるはずの行為を、窮屈で、罪悪感に満ちたものへと、変えてしまう。

経理のプロが実践する、本当の“資産管理” - 2つの、最重要指標

では、僕たちプロは、どこを見ているのか。 それは、日々の、細かい支出ではない。僕たちが見ているのは、もっと、大きな、そして、本質的な、二つの“流れ”だけだ。

①「貸借対照表(B/S)」- 資産の“総量”だけを、見よ

まず、君が、本当に管理すべきは、君の人生における「財産目録」、すなわち、個人の**「貸借対照表(バランスシート)」**だ。 と言っても、難しいことは、何もない。

資産(現金、預金、投資信託、株式、不動産…) - 負債(住宅ローン、奨学金、借金…) = 純資産

この、たった一つの「純資産」という数字。 これこそが、君の、今の、本当の「経済的な体力」を示す、唯一の、指標だ。

そして、君が、やるべきことは、ただ一つ。 この「純資産」が、先月より、あるいは、3ヶ月前より、着実に、増えているか、どうか。 それを、月に一度、あるいは、3ヶ月に一度、確認する。ただ、それだけでいい。

日々の、100円、200円の支出に、一喜一憂するのではない。 自分の資産の「総量」という、大きな、大きな、視点を持つ。 これこそが、プロの、思考法だ。

②「キャッシュフロー」-“仕組み”で、未来を、コントロールせよ

では、どうすれば、この「純資産」を、着実に、増やしていくことができるのか。 その答えが、「キャッシュフロー」の、管理だ。

しかし、それもまた、家計簿で、支出を管理することではない。 それは、収入が入ってきた、その“源流”で、お金の流れを、完全に、コントロールしてしまう「仕組み」を、構築することだ。

僕が実践している、あまりにも、シンプルで、しかし、最強のキャッシュフロー戦略。

  • STEP 1:給料が、振り込まれる。
  • STEP 2:その、翌日。「先取り」で、あらかじめ決めた、一定額を、証券口座に、自動で、送金する。
  • STEP 3:そのお金で、NISAなどを使い、投資信託を、自動で、積み立てる。

以上。 たった、これだけだ。

この「先に、貯蓄と投資を、済ませてしまう」という、仕組みさえ、一度、構築してしまえば。 あとは、銀行口座に、残ったお金の範囲内で、君は、完全に、自由に、生きていい。 そのお金を、飲み会で使おうが、趣味に費やそうが、僕は、一切、気にしない。 なぜなら、僕の、未来のための「貯蓄」は、すでに、完了しているのだから。

結論:君は、“会計係”になるな。“CFO”になれ

もう、レシートの束を前に、自分を責めるのは、やめにしよう。 君が、やるべきは、日々の、細かい支出を記録する「会計係」の仕事ではない。

君が、やるべきは、

  • 自らの、純資産の、全体像を把握し、
  • 未来のための、キャッシュフローの、仕組みを、デザインし、
  • そして、残った金で、どう、人生を豊かにするかを、決断する。

という、君自身の人生という名の、会社の「CFO(最高財務責任者)」としての、仕事なのだ。

本当の資産管理とは、過去を、罪悪感と共に、記録することではない。 それは、未来を、戦略と、意思をもって、デザインすることなのである。

さあ、家計簿は、もう、捨てていい。 そして、君だけの、賢明で、力強い「資産管理システム」を、今日から、構築し始めようではないか。

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