働き方 支出の最適化

38歳の僕が、20代の君に伝えたい、人生の“難易度”を劇的に下げる4つの鉄則

「情熱に従え」という、無責任なアドバイス

「好きなことを仕事にしよう」 「情熱に従って、自分らしく生きよう」

世の中には、20代の若者に向けた、そんな美しく、聞こえの良いアドバイスが溢れている。しかし、38歳になった僕は、そうした言葉を聞くたびに、ある種の危うさを感じずにはいられない。

なぜなら、僕自身が歩んできた道は、そんなキラキラしたものでは、断じてなかったからだ。 僕の今の自由と安定は、情熱ではなく「戦略」によって、夢ではなく「規律」によって、築き上げられた。

この記事は、「何者か」にならなければと焦る、20代の君へ贈る、僕からの手紙だ。 これは、楽しい話ではないかもしれない。むしろ、地味で、退屈で、厳しい話だ。しかし、もし君が、これからの長い人生を、他人に振り回されず、自分の足で、どっしりと大地を踏みしめて歩んでいきたいと願うなら。

僕が20代の頃、自らに課し、そして、僕の人生の“難易度”を劇的に下げてくれた、4つの「鉄の掟」について、正直に語りたいと思う。


鉄則①:給料日を「収穫祭」だと思うな。「種まきの日」だと思え

20代の給料は、少ない。僕もそうだった。 だからこそ、多くの人はこう考える。「こんな少ない給料じゃ、貯金なんてできない」と。

これが、最初の、そして最大の罠だ。

20代の資産形成で重要なのは、「金額」ではない。「習慣」だ。 たとえ月々1万円でもいい。給料が振り込まれた瞬間に、そのお金を、自分のものではない“未来への税金”として、天引きで積立投資に回すのだ。

僕が推奨するのは、思考停止で「オルカン」か「S&P500」に連動する投資信託を、ただひたすらに買い続けること。それだけでいい。

給料日は、ご褒美を買うための収穫祭ではない。 それは、20年後、30年後に、自分を助けてくれる大樹を育てるための、「種まき」の日なのだ。 そして、一度植えた種は、嵐が来ようと、日照りが続こうと、決して引っこ抜いてはいけない。ただ、存在を忘れて、水(毎月の積立)をやり続ける。その地味な行為だけが、君の未来に、揺るぎない安心感という名の“木陰”を作ってくれる。


鉄則②:「好きな仕事」を探すな。「希少価値」が生まれる場所を探せ

「好きなことを仕事に」。 それは、宝くじに当たるような、ごく一部の幸運な人間のための言葉だ。 僕たち凡人が20代でやるべきは、そんな不確かなものを探すことではない。

仕事に、真剣に向き合うこと。そして、その場所が、自分の「希少価値」を高めてくれる場所かどうかを、常に自問することだ。

僕自身の話をしよう。 僕は、新卒で「経理」という、決して華やかではないキャリアをスタートさせた。しかし、僕は、ただ黙々と、その専門性を7年間、磨き続けた。

そして、30歳になった時、僕は、労働市場において、ある種の「希少人財」になっていた。「7年間、一貫して経理の経験を積んできた、若手」という、明確なタグが付いたのだ。 そのタグがあったからこそ、僕は、より待遇の良い、優良企業への転職を成功させることができた。

もし、僕が「自分探し」と称して、2〜3年で職を転々としていたら? そこには、「何でもできるが、何もできない、ただの30歳」が、生まれていただけだろう。

君が今いる場所は、3年後、5年後、君に、他人にはない「タグ」を与えてくれる場所か? その問いに「YES」と答えられないのなら、君は、戦う場所を間違えているのかもしれない。


鉄則③:勉強しろ。死ぬ気で、勉強しろ。

これもまた、残酷な真実だ。 君が卒業した大学の名前は、25歳を過ぎれば、ほとんど何の意味も持たなくなる。

社会という戦場で、君の価値を客観的に証明してくれるのは、学生時代の成績ではない。それは、仕事に直結する「資格」という名の、具体的な武器だけだ。

僕が経理としてキャリアを積んでいた時も、常に簿記や関連資格の勉強を続けていた。なぜなら、それが、僕の市場価値を、最も分かりやすく高めてくれる手段だったからだ。転職の面接で、君の「やる気」や「ポテンシャル」を、どうやって証明する? 熱意のこもった言葉か? 違う。客観的な「資格」こそが、君の努力と能力を、最も雄弁に物語るのだ。

仕事で疲れた後に、机に向かうのが地獄であることは、僕も知っている。 しかし、その数ヶ月、数年の地獄は、資格がなく、市場で評価されず、未来の選択肢がないまま、何十年も続く地獄に比べれば、天国のようなものだ。


鉄則④:生活レベルは、絶対に上げるな。

そして、これが、僕が君に伝えたい、最も重要な鉄則だ。 これから、君の給料は、少しずつ上がっていくだろう。昇進し、ボーナスも増えるかもしれない。

その時、君の心の中では、悪魔が囁く。 「もっと良い部屋に住まないか?」 「そろそろ、車でも買ったらどうだ?」 「その給料なら、このくらいの服が相応しい」

その囁きに、耳を貸してはならない。それは、君を永遠のラットレースに閉じ込める、悪魔の罠だ。

給料が上がっても、君は、新入社員の頃と同じ生活レベルを、意地でも維持しろ。 家賃は、給料の3割ではない。可能な限り、安く抑えろ。 飲み会は、週に1回まで。 服は、機能性で選べ。

給料の上昇分は、すべて、未来の自由を買うための「投資」に回すのだ。 君の収入と、君の低い生活レベルとの間に生まれた「差額」。それこそが、君の人生に「選択肢」という名の、自由をもたらす、唯一の源泉なのである。


20代の“我慢”は、40代の“自由”になる

ここまで、僕は、20代の君に、厳しいことばかりを言ってきた。 貯金しろ。勉強しろ。遊ぶな。生活レベルを上げるな。

まるで、人生の楽しみを、すべて否定しているように聞こえたかもしれない。

しかし、なぜ僕が、これを断言できるのか。 それは、38歳になった僕が今、あの頃の僕の「我慢」の上に成り立った、「自由」を、確かに享受しているからだ。

会社の理不尽に、心を殺す必要はない。 お金の不安に、未来を縛られることもない。 自分の人生を、自分の「納得感」だけで、デザインできる。

20代の規律は、40代の自由になる。 20代の自己投資は、40代の自信になる。 20代の種まきは、40代の、豊かな収穫になる。

君が今、踏み出す、その地味で、退屈な一歩。 その一歩こそが、20年後の君を、今の君が想像もできないような、自由な場所へと、連れて行ってくれるのだから。

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