その「甘い酒」という名前に、僕は騙されていた
正直に告白すると、僕は甘いものが得意ではない。だから「甘酒」という飲み物には、これまで縁遠い人生を送ってきた。「甘い酒」など、僕の辞書には存在しない言葉だった。
しかし、ある日ひょんなことから勧められ、その正体を調べてみた時、僕は自分の無知を恥じた。そして、その奥深さに、雷に打たれたような衝撃を受けたのだ。
僕が知らなかった甘酒の世界は、単なる甘い飲み物などではなかった。それは、1300年以上前の歴史書にその名を刻む、日本のスーパーフード。砂糖を一切使わず、米と麹(こうじ)だけで、奇跡のような甘さを生み出す、古代からの錬金術。そして、現代科学が「飲む点滴」「飲む美容液」と認めざるを得ないほどの、驚異的な栄養の塊だった。
その日から、僕の人生は変わった。今では、自家製の甘酒を毎日欠かさず飲むようになった。 これは、かつての僕のように「甘酒」という名前に騙され、その真価を知らずにいるあなたへ贈る、神秘の世界への招待状だ。
第一章:甘酒の正体 - それは「酒」ではなく、米が咲かせた“甘い花”だった
まず、多くの人が抱く最大の誤解を解いておきたい。僕が語る甘酒は、「酒」ではない。
甘酒には、大きく分けて2種類ある。一つは、日本酒を造る過程で出る「酒粕」を砂糖で溶いて作る、アルコールを含むもの。もう一つが、「米麹」と米を発酵させて作る、アルコールを一切含まないものだ 。
僕が人生を捧げると決めたのは、後者の「米麹甘酒」だ。 その作り方は、驚くほどシンプル。炊いた米と米麹を混ぜ、60℃程度の温度で6〜8時間ほど保温するだけ。砂糖も、添加物も、一切必要ない。
すると、米麹に含まれる酵素(アミラーゼ)が、米のデンプンをブドウ糖へと分解し、自然で、深く、そして驚くほど豊かな甘みを生み出してくれるのだ 。これは、麹菌という微生物が、米という素材の上で咲かせた、甘い“花”のようなものだ。
アルコール分は0.00%なので、子どもから大人まで、誰でも安心して飲むことができる。もちろん、自家醸造が禁じられている酒税法にも抵触しない 。
第二章:「飲む点滴」「飲む美容液」は、伊達じゃなかった - 科学が解き明かす脅威の効能
このシンプルな飲み物が、なぜこれほどまでに崇められるのか。それは、その成分が、現代科学の目から見ても驚異的だからだ。
なぜ「飲む点滴」なのか?
その理由は、成分が医療用点滴と酷似しているからだ 。脳と身体のエネルギー源となる
ブドウ糖、身体を作る必須アミノ酸、そして代謝を助けるビタミンB群。これらが、消化吸収されやすい形で、完璧なバランスで含まれている 。疲労回復に即効性があるのは、理にかなっているのだ 。
なぜ「飲む美容液」なのか?
麹菌は、発酵の過程で「コウジ酸」という成分を生み出す 。このコウジ酸には、シミやそばかすの原因となるメラニンの生成を抑制する働きがあることが、多くの研究で示されている 。さらに、肌の保湿とバリア機能を改善する
「グルコシルセラミド」も含まれており、まさに内側から肌を整える美容液なのだ 。
腸内環境を整え、免疫力を支える
甘酒に含まれる食物繊維とオリゴ糖は、腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える 。免疫細胞の約7割が集中すると言われる腸が健康になることで、免疫力の向上が期待できるのだ 。
その他にも、高血圧抑制やストレス軽減効果などが報告されており、その効能は枚挙にいとまがない 。
第三章:1300年前から続く、日本のスーパーフード - 甘酒の悠久の歴史
この驚くべき飲み物が、最近の健康ブームで生まれたものではないという事実に、僕はさらに感動を覚えた。
その歴史は、なんと奈良時代まで遡る。720年に編纂された日本最古の歴史書『日本書紀』には、甘酒のルーツとされる「天甜酒(あまのたむざけ)」や「醴酒(れいしゅ)」といった記述が、すでに登場しているのだ 。
神話の時代、女神・木花咲耶姫(このはなさくやひめ)が醸したとされる天甜酒 。応神天皇に献上された醴酒 。古代の日本人たちは、顕微鏡などない時代に、「発酵」という神秘の力を理解し、その恩恵を享受していたのだ。
そして、驚くべきことに、江戸時代、甘酒は「冬の飲み物」ではなく、「夏の栄養ドリンク」として庶民に愛されていた 。エアコンなどない時代、人々は甘酒を飲んで夏バテを乗り切り、その滋養強壮効果から、俳句の世界では今でも「甘酒」は夏の季語とされている 。
第四章:なぜ「自家製」にこだわるのか - “生きた力”を、丸ごといただく
市販の甘酒も手軽で良い。しかし、僕が自家製にこだわるのには、決定的な理由がある。それは、甘酒の力の源である**「菌」と「酵素」の力を、最大限に引き出すため**だ。
市販されている甘酒の多くは、流通や長期保存のために、「火入れ」という加熱殺菌処理が施されている 。この熱処理によって、残念ながら、熱に弱い酵素や一部のビタミン、そして生きた菌の多くは、その働きを失ってしまう 。
しかし、自家製ならば、その心配はない。 火入れをしない「生甘酒」は、麹菌が生み出した酵素やビタミン、そして発酵の過程で生まれる有益な菌の力を、生きたまま丸ごといただくことができるのだ 。
「簡単」で、「安く」、そして何より「古代の人々と同じ製法を、この手で追体験できる」。自家製甘酒は、僕にとって最高の知的冒険でもある。
第五章:僕でもできた。驚くほど簡単な、自家製甘酒レシピ
「でも、自分で作るのは難しそう…」と思うかもしれない。その心配は無用だ。驚くほど簡単である。
【材料】
- 米(私は玄米を使用):1合
- 米麹:200g
- 水:400cc
【使う道具】
- 炊飯器
- ヨーグルトメーカー(または炊飯器の保温機能)
【作り方】
- 米を炊く: まずは、いつも通り米を炊く。少し水を多めにして、柔らかめに炊くのがポイントだ。
- 米と水を混ぜる: 炊きあがった米に、水を加えてよく混ぜ、温度を60℃くらいまで下げる。
- 米麹を投入: 米麹を加え、ダマにならないよう、丁寧にかき混ぜる。
- 保温する: ヨーグルトメーカーや炊飯器の保温機能を使い、「60℃で6時間」、静かに眠らせる。この温度管理が、甘さを引き出す唯一にして最大のコツだ。
たった、これだけである。
6時間後、蓋を開けると、ふわりと甘い香りが立ち上る。一口飲んでみてほしい。砂糖を一切使っていないとは信じられないほどの、深く、優しい甘さに、きっとあなたも感動するはずだ。
飲むときは、少し水で薄め、人肌より少し熱い60℃程度に温めると、菌が活性化してベストだと言われている。冷蔵で1週間、冷凍すれば1ヶ月は持つ。
日本古来の叡智が詰まった、奇跡の発酵食「甘酒」。 ぜひ、あなた自身の手で、その感動と効果を体験してみてほしい。きっと、一杯の飲み物が、あなたの世界を少しだけ、豊かに変えてくれるはずだから。