
かつての“神”は、本当に、全知全能だったのか?
かつて、僕は、このブログで「牛乳」を、絶賛したことがある。 「プロテイン信者だった僕が、結局“牛乳”に回帰した理由」と題し、吸収の速いホエイと、遅いカゼインが織りなす、天然のタイムリリースプロテインであると。科学的にも、コストパフォーマンスの観点からも、最強の筋肉飲料なのだ、と。
今でも、その考えの“一部”は、正しいと信じている。 しかし、自らの身体と、食に関する探求を、さらに深く進めていく中で、僕は、この、かつて僕が“神”と崇めた、白く、完璧に見えた液体に、ある種の「影」、あるいは「不都合な真実」が存在することに、気づいてしまったのだ。
この記事は、そんな僕が、なぜ、あれほど絶賛したはずの牛乳、そして、チーズやヨーグルトといった「乳製品」全般と、意識的に“距離”を置き始めたのか。その、少しだけ複雑で、しかし、僕たちの健康の本質に迫る、個人的な思考の変遷についての、全記録である。
その“ゴロゴロ”、本当に「体質」の一言で、片付けていいのか?
僕たちが、牛乳に対して抱く、最初の、そして、最も分かりやすい違和感。 それは、飲んだ後に訪れる、お腹の「ゴロゴロ」や、不快感だ。いわゆる「乳糖不耐症」である。
多くの人は、これを「自分だけの、特殊な体質だ」と思い込んでいる。 しかし、事実は、全く逆だ。
成体になっても、乳製品に含まれる糖「ラクトース」を、問題なく消化できる能力。それは、本来、人類のデフォルト設定ではない。それは、牧畜文化が長かった、一部の地域の人々(主にヨーロッパ系)が、後天的に獲得した「突然変異」なのだ。
東アジア人の、実に70%〜90%は、この突然変異を持たず、ラクトースを十分に消化できない、乳糖不耐症である、というデータもある。
つまり、僕たちアジア人にとって、牛乳を飲んで、お腹がゴロゴロするのは「異常」なのではない。むしろ、それが「正常」なのだ。 僕たちは、長年、「牛乳は、身体に良いものだ」という、強力な栄養神話の下で、自らの身体が発する、静かな悲鳴を、無視し続けてきたのかもしれない。
牛という“種”を超えた、不自然な介入
さらに、僕が抱くようになった、より根源的な疑問。 それは、「そもそも、他の“種”の乳を、成体になってからも、日常的に飲み続けるという行為は、自然なのだろうか?」という、問いだ。
牛乳とは、言うまでもなく、巨大な牛の赤ちゃんが、短期間で、急成長するために、最適化された、極めてパワフルな液体である。 そこには、子牛を育てるための、様々なホルモンや、成長因子(IGF-1など)が、当然のことながら、豊富に含まれている。
これらの物質が、種の壁を超え、成長期を終えた、僕たち人間の身体に、長期的に、どのような影響を与えるのか。 正直なところ、その全貌は、まだ、科学的に完全には、解明されていない。 しかし、一部の研究では、乳製品の過剰摂取と、特定のがんや、アレルギー疾患との関連性を指摘する声も、上がり始めている。
僕たちが、何の疑いもなく、毎日、シリアルにかけている、あの白い液体。 それは、本当に、僕たちの健康のために、デザインされたものなのだろうか。
チーズとヨーグルト -“健康的”という名の、二つの“罠”
「牛乳は苦手でも、チーズやヨーグルトなら、大丈夫」 そう考える人も、多いだろう。しかし、ここにも、巧妙な罠が、潜んでいる。
① チーズという名の、「濃縮された脂肪と塩分」
チーズは、確かに、美味しい。 しかし、その製造プロセスを考えれば、その正体は、牛乳から水分を抜き、タンパク質と脂肪を、極限まで“濃縮”させた、塊であることがわかる。 そして、その過程で、大量の「塩分」が、加えられる。
僕たちが、ヘルシーだと思い込み、サラダに振りかけている、その粉チーズ。 それは、僕たちの身体にとっては、「飽和脂肪酸」と「塩分」という、二つの“白い悪魔”の、強力な“連合軍”に他ならない。
② 市販のヨーグルトという名の、「砂糖水」
「腸活のために、毎朝、ヨーグルトを食べています」 素晴らしい習慣だ。ただし、君が食べているのが、「無糖」で「プレーン」な、本物のヨーグルトであるならば、の話だ。
スーパーの棚に並ぶ、色とりどりのフルーツヨーグルトや、「飲むヨーグルト」の原材料表示を、見てほしい。 その先頭に書かれているのは、多くの場合、「砂糖」や「果糖ぶどう糖液糖」といった、僕が、これまで何度も警鐘を鳴らしてきた、最悪の“白い悪魔”たちだ。 僕たちは、善玉菌という、ほんの僅かなメリットのために、大量の糖質という、計り知れないデメリットを、自ら、喜んで、摂取している。 それは、もはや「健康食品」の顔をした、ただの“デザート”なのだ。
僕が実践する「戦略的“脱・乳製品”」- 距離を置く、という知恵
これらの事実に気づいた上で、僕が下した決断。 それは、「完全な菜食主義者になる」といった、極端なものではない。 それは、「日常的な、無意識の乳製品摂取から、意識的に“距離を置く”」という、極めて現実的な戦略だ。
- 毎朝の牛乳は、やめた。 代わりに、アーモンドミルクや、豆乳を、試している。
- プロテインは、牛乳ではなく、水で割るようになった。 トレーニング直後という、特定の目的のためだけに、牛乳の力を借りることはあってもいい。しかし、それを「日常」にはしない。
- チーズは、「嗜好品」として、たまに、本当に美味しいものを、少量だけ、味わう。 日常のタンパク源として、無邪気に摂取することは、もうない。
- ヨーグルトは、必ず「無糖」を選ぶ。 そして、甘みが欲しければ、自分で、少量のハチミツや、果物を加える。
この、小さな習慣の変更。 それだけで、僕の身体は、明らかに、軽くなった。長年、悩まされてきた、原因不明の腹部の不快感が、嘘のように、消え去ったのだ。
結論:常識を疑え。そして、君自身の“身体の声”を聞け
「牛乳は、身体に良い」 僕たちが、子どもの頃から、何の疑いもなく信じてきた、この“常識”。 それは、本当に、今の君にとって、そして、僕たちの種にとって、絶対的な「真実」なのだろうか。
この記事は、乳製品そのものを「悪」だと、断罪するものではない。 ある人にとっては、それは、素晴らしい栄養源であり続けるだろう。
しかし、僕が、本当に伝えたいのは、これだ。 世間一般の「常識」や、企業のマーケティング、そして、過去の自分の知識すらも、一度、疑ってみろ。 そして、その代わりに、君自身の「身体の声」に、誰よりも、真摯に、耳を傾けてほしい。
その、小さな「ゴロゴロ」や、「不快感」という名のサイン。 それこそが、君だけの、本当の「正解」を、教えてくれる、最も信頼できる、ナビゲーターなのだから。