
「配当金だけで、生活できたら…」
投資をする多くの人が、一度は抱くであろう、甘美な夢。それが「配当金生活」という言葉です。
2024年から始まった新NISAは、その生涯投資枠の大きさと、利益が非課税になるという強力なメリットによって、この夢を、より現実的な目標へと引き寄せてくれました。
しかし、「夢」と「目標」の間には、大きな隔たりがあります。その隔たりを埋めるものこそが、**「具体的な数字に基づいた、現実的な計画」**です。
この記事では、漠然とした夢に、くっきりとした輪郭を与えるための、超現実的なシミュレーションを行います。
テーマは、「新NISAを使い、人気米国高配当株ETFのVYMだけで、税引き後“月1万円”の分配金を得る」こと。
「月1万円?」と思うかもしれません。しかし、この最初の「月1万円」こそが、配当金生活という長い道のりにおける、最も重要で、最も価値のある一歩なのです。
この記事を読み終える頃、あなたは「自分にもできるかもしれない」という確かな手応えと、明日から踏み出すべき具体的なステップを、手に入れているはずです。
1. ゴール設定:月1万円の配当金、その絶大な価値
まず、僕たちのゴールを再確認しましょう。 目標は「税引き後で、月々1万円の不労所得」です。年間にすれば、12万円。
この金額の価値を、具体的に想像してみてください。
- 毎月のスマホ代と、電気・ガス代が、実質無料になる。
- 毎月、ちょっと贅沢なディナーを、誰かにプレゼントできる。
- 年間で見れば、LCCで気軽に海外旅行へ行ける。
- あるいは、年間12万円を、そのまま投資に回し、資産をさらに増やすこともできる。
月1万円の配当金とは、あなたの生活に、確かな「ゆとり」と「選択肢」をもたらしてくれる、過去の自分が、未来のあなたに贈ってくれる、最高のプレゼントなのです。この小さな成功体験が、資産形成という長いマラソンを走り抜くための、何よりのガソリンとなります。
2. シミュレーションの「前提条件」を整理しよう
さて、ここからが本題です。現実的なシミュレーションを行うために、まずは計算の「前提条件」を、一つひとつ丁寧に設定していきましょう。ここを曖昧にすると、全ての計算が机上の空論になってしまいます。
- 投資対象: VYM(バンガード・米国高配当株式ETF) 今回は、約460銘柄に分散された、最も王道で安定感のある高配当株ETFであるVYMを対象とします。
- 分配金利回り(税引き前): 3.0% VYMの利回りは常に変動しますが、過去の実績から見て、無理のない現実的な数字として「年率3.0%」を仮定します。
- 税金: 米国現地課税の10%のみ ここが最重要ポイントです。新NISA口座(成長投資枠)を利用することで、日本国内での課税(20.315%)は完全に非課E税となります。しかし、VYMは米国ETFであるため、分配金に対して、米国内で10%の源泉徴収がなされます。これは、新NISAを使っても回避できません。 したがって、僕たちが実際に受け取る手取りの利回りは、 3.0% × (1 - 0.10) = 2.7% この「実質利回り2.7%」という数字を、計算のベースとします。
- 為替レート: 1ドル = 150円 為替も常に変動しますが、シミュレーションを分かりやすくするため、1ドル150円で固定して計算します。
全ての前提が整いました。いよいよ、具体的な計算に入っていきましょう。
3. 【計算編】月1万円の配当金に必要な「元本」はいくら?
では、実質利回り2.7%で、年間12万円(月1万円)の配当金を得るためには、一体いくらの元本が必要になるのでしょうか。
Step 1:年間の目標配当額(円→ドル) まず、年間の目標額12万円を、ドルに換算します。 120,000円 ÷ 150円/ドル = 800ドル
つまり、年間に「800ドル」の配当金(税引き後)を受け取ることが、僕たちの目標です。
Step 2:必要な元本(ドル)を計算 次に、この目標を達成するために必要な元本を、ドル建てで計算します。計算式はシンプルです。
必要な元本 = 年間目標配当額 ÷ 実質利回り 800ドル ÷ 0.027 = 約29,630ドル
分かりやすく、キリの良い数字にすると「約3万ドル」の元本が必要だということが分かりました。
Step 3:必要な元本(ドル→円) 最後に、この3万ドルを、円に換算してみましょう。 30,000ドル × 150円/ドル = 4,500,000円
結論: 新NISA口座で、VYMだけで税引き後月1万円の配当金を得るためには、約450万円の投資元本が必要 これが、僕たちが目指すべき、最初の具体的な山の高さです。
4. 【計画編】元本450万円を、どうやって貯める?
450万円。 決して小さな金額ではありません。しかし、絶望するには及びません。これもまた、具体的な計画に落とし込むことで、到達可能な目標へと変わります。
ここでは、元本450万円を達成するための期間を、毎月の積立額別にシミュレーションしてみましょう。(※分かりやすくするため、ここでは株価の成長や配当金再投資を考慮しない、単純な積立計算とします)
毎月の積立額 | 450万円達成までの期間 |
月3万円 | 150ヶ月 (約12年半) |
月5万円 | 90ヶ月 (約7年半) |
月10万円 | 45ヶ月 (約3年9ヶ月) |
月15万円 | 30ヶ月 (約2年半) |
いかがでしょうか。 例えば、毎月5万円を積み立てれば、7年半後には、あなたの資産は、毎月1万円を生み出し続ける「お金のなる木」に育つのです。
補足:実際は、もっと早くなる可能性も・・・上記の計算は、株価の成長や、受け取った配当金を再投資することを考慮していません。実際には、これらの複利効果によって、目標達成までの期間は、シミュレーションよりも短くなる可能性が高い、ということも、嬉しい事実として付け加えておきます。
5. 夢物語で終わらせないために
「月1万円の配当金を得るには、450万円が必要」 この数字を見て、「やっぱり大変だ」と感じたかもしれません。
しかし、最も重要なことは、最初の一歩を踏み出すことです。
450万円という山も、最初の1万円、最初の10万円という一歩から始まります。そして、一度「月1万円」というキャッシュフローを生み出す仕組みを作ってしまえば、そこから先は、雪だるま式に資産は増えやすくなります。
なぜなら、その月1万円を、さらにVYMの買い増しに使う「配当金再投資」ができるからです。あなたが生み出したお金が、さらに新しいお金を生み出す。この「複利のサイクル」に入ることこそが、資産形成のゲームを、圧倒的に有利に進めるための鍵なのです。
配当金生活は、一朝一夕で実現する夢ではありません。 しかし、新NISAという強力な追い風が吹く今、それは決して、夢物語でもありません。
今日のシミュレーションで、あなたの「夢」は、具体的な「目標」に変わったはずです。 次は、あなたが、その目標に向かって、最初の一歩を踏み出す番です。