FIRE

なぜ、多くのFIRE達成者は“不幸”になるのか。 僕が「お金」よりも、「退職後の計画」に、時間を費やしてきた理由

ゴールテープの先に広がる“虚無”

「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」 この、4文字の言葉は、現代を生きる僕たちにとって、最強の“希望”の呪文だ。 会社という名の、ラットレースから抜け出し、お金と、時間の心配から、完全に解放された、自由な人生。

僕もまた、その希望に魅せられ、30代という季節の、そのほとんどのエネルギーを、資産形成という、ただ一つの目的のために、捧げてきた。そして、そのゴールテープは、今、もう、目の前に迫っている。

しかし、そのゴールが近づけば、近づくほど。僕の心を満たしたのは、歓喜や、高揚感ではなかった。 むしろ、その逆だ。僕の心に、静かに、そして、重く、のしかかってきたのは、「で、この後、どうするんだ?」という、巨大で、そして、恐ろしいほどの“虚無”だった。

FIREムーブメントには、誰もが、口にしたがらない、不都合な真実がある。 それは、驚くほど多くのFIRE達成者が、その手に入れたはずの自由の中で、目的を失い、退屈と、孤独と、そして、うつ状態に、苦しんでいるという、現実だ。

この記事は、そんな僕が、いかにして、その「FIRE後の“虚無”」という名の、最後の“ラスボス”と、向き合ってきたか。そして、なぜ、僕が、資産額の計算よりも、遥かに多くの時間を、「退職後の人生設計」に、費やしてきたのか。 その、僕なりの「幸福なFIRE」を、実現するための、思考の全記録である。

“ゴール設定”という、巧妙な罠 - なぜ、僕たちは、目的を失うのか

考えてみてほしい。 僕たち、FIREを目指す人間は、長年にわたり、たった一つの、極めて明確な「目標」に向かって、人生のすべてを、最適化してきた。

「目標資産額、〇〇円を、達成する」

この、シンプルで、強力な目標が、僕たちの人生に、意味と、秩序と、そして、日々のモチベーションを、与えてくれていた。 節約も、自己投資も、面白くもない仕事を、続けることさえも、すべては、この輝かしいゴールに、たどり着くためだった。

しかし、そのゴールテープを、切ってしまった、その“翌朝”。 僕たちの人生から、何が起きるか。 人生の、唯一の“目的”が、完全に、消え失せるのだ。

これまで、僕たちを、突き動かしてきた、強烈なエンジンが、突然、停止する。 残されるのは、1日24時間、1年365日という、あまりにも、広大で、そして、何の指針もない、「自由という名の、砂漠」だ。

会社という、居場所を失い、社会との繋がりを、断ち切られ、ただ、無限に続く、時間を、一人、持て余す。 僕たちが、あれほどまでに、憎んでいたはずの「仕事」が、実は、僕たちの人生に、いかに多くの「意味」や「役割」や「他者との繋がり」を、与えてくれていたか。 その、皮肉な事実に、多くのFIRE達成者は、退職した後に、初めて、気づかされるのだ。

「資産を築くスキル」と「人生を、豊かに生きるスキル」は、全く“別物”である

これが、僕たちが、直視しなければならない、最も、重要な真実だ。

  • 資産を築くスキル: それは、「引き算」のスキルだ。支出を切り詰め、欲望をコントロールし、未来のために、現在の快楽を、我慢する。それは、“規律”“忍耐”の技術である。
  • 人生を、豊かに生きるスキル: それは、「足し算」のスキルだ。新しいことに挑戦し、人々と繋がり、好奇心を満たし、心から、今この瞬間を、味わい尽くす。それは、“創造性”“情熱”の技術である。

僕たちは、FIREを目指す過程で、前者の「引き算のスキル」を、黒帯レベルにまで、磨き上げる。 しかし、後者の「足し算のスキル」は、全く、手付かずのまま、白帯のままで、放置してしまっている。

そして、人生の後半戦という、新しい試合が始まった瞬間に、「自分は、戦い方を、全く知らないのだ」という事実に、愕然とする。 これこそが、多くのFIRE達成者が、不幸になる、根本的なメカニズムなのだ。

僕の「第二の人生」の、設計図 - “虚無”と戦うための、具体的な“柱”

では、どうすればいいのか。 その答えは、「FIREを、達成する、何年も前から、退職後の人生を、具体的に、設計し、そして、“予行演習”を、始めておくこと」だ。

僕が、今、必死で、築き上げている、僕の「第二の人生」を、支えるための、具体的な“柱”を紹介しよう。

①「創造」の柱:このブログを、書くということ

僕にとって、このブログは、単なる趣味ではない。 それは、僕の思考を、整理し、言語化し、そして、世界と繋がるための、最も、重要な「知的生産活動」だ。 FIRE後も、僕は、このブログを、書き続けるだろう。 それは、僕に、「学び続ける理由」と、「社会と、関わり続けるための、窓口」を、与えてくれる、僕の人生の、背骨なのだ。

②「大地との接続」の柱:農業を、始めるということ

僕は、FIRE後、小さな畑を借りて、「農業」を、始めようと、考えている。 これは、ロマンチックな、田舎暮らしへの憧憬ではない。 これは、デジタル化し、抽象化していく世界の中で、僕が、「リアルな、物理的な世界」との、接続を、失わないための、極めて、戦略的な選択だ。 土に触れ、種を蒔き、自らの手で、食べ物を、育てる。 その、生命の、根源的なサイクルに、身を置くことで、僕の心は、バランスを、保つことができると、信じている。

③「貢献」の柱:まだ見ぬ、誰かのために

そして、僕が、これから、ゆっくりと、見つけていきたいのが、この「貢献」の柱だ。 それは、NPOの活動かもしれないし、地域の、ボランティアかもしれない。 自分のためだけに、生きるのではない。これまで、社会から、受け取ってきた恩恵を、次の世代や、まだ見ぬ、誰かのために、少しでも、還元していく。 その、ささやかな「貢献」こそが、僕の人生の、後半戦に、本当の「意味」を、与えてくれるはずだ。

結論:君が、本当に“計算”すべき、数字とは

もし、君が今、FIREという、遠い頂を、目指しているのなら。 どうか、忘れないでほしい。

君が、本当に、計算し、シミュレーションすべきは、「資産額」という、無機質な数字だけではない。 君が、本当に、計算すべきは、「FIRE後の、一週間を、君は、何で、埋め尽くすのか」という、君自身の、“幸福度”の、設計図なのだ。

FIREとは、人生からの「逃避」ではない。 それは、「自分だけの、オーダーメイドの人生を、ゼロから、デザインし始める」という、壮大で、そして、最も、創造的な、プロジェクトの、始まりなのである。

さあ、君も、計算機の横に、真っ白なノートを、広げてみよう。 そして、問いかけてみてほしい。

「もし、明日、お金の心配が、なくなったとしたら。僕は、本当は、何を、して生きたいのだろうか?」と。

その、恐ろしくも、胸躍る問いへの“答え”こそが、君が、本当に目指すべき、本当の「FIRE」の、姿なのだから。

-FIRE