なぜ、君の“崇高な夢”は、いつまで経っても叶わないのか。- 人間が“ただの動物”であるという、残酷な真実について

君は、まだ“空の上”で、戦っているのか

「自己実現を果たしたい」 「情熱を傾けられる、天職を見つけたい」 「世界を変えるような、偉大な何かを成し遂げたい」

僕たちは、自己啓発書にそう教えられてきた。 人生の目的とは、自らの最も高次な欲求を満たすことなのだと。

しかし、その、あまりにも崇高で、美しい“夢”を追い求めれば、追い求めるほど、僕たちの現実は、なぜか少しも変わらない。 それどころか「理想」と「現実」の残酷なまでのギャップに打ちのめされ、「自分はなんてダメな人間なんだ」という、自己嫌悪の沼に沈んでいく。

なぜ、僕たちの、努力は、報われないのだろうか。 その理由は、シンプルだ。

僕たちは、家の土台を築く前に屋根から作ろうとしているからだ。 僕たちは、自らが「ただの動物である」という、この、世界の最も根源的で、そして、不都合な真実から目をそむけ続けているからなのだ。

この記事は、そんな僕たちが、一度、その雲の上の、空想から地上へと、降り立ち自らの「動物」としての、土台をいかにして、盤石に固めるべきか。 その、極めて現実的で、しかし、それこそが夢への唯一の近道であるという「戦略」についての物語である。

人間という“動物”の、抗いがたい“法則”

心理学者、アブラハム・マズローが提唱した「欲求五段階説」という、有名な理論がある。 これは、人間の欲求をピラミッドの階層構造として捉えたものだ。 そして、このピラミッドには、決して逆らうことのできない絶対的な「法則」が存在する。 それは、「人間は下の階層の欲求が満たされて、初めてその一つ上の階層の欲求を抱くことができる」という法則だ。

第一階層・第二階層：【動物】としての、僕たち

ピラミッドの最も土台となるこの部分。 それは、僕たちが「人間」である前に、まず「動物」として生き延びるための根源的な欲求だ。

• 生理的欲求： 食欲、睡眠欲、排泄欲。生命を、維持するための、最低限の、欲求。
• 安全の欲求： 雨風を、しのげる、安全な住処。経済的な、安定。病気や、怪我からの、自由。

この、土台がグラついている状態で、僕たちの脳は正常には機能しない。 常に「生存」の危機に晒され、その思考のすべては、目先の不安を解消するためだけに使われてしまう。

第三階層以降：【人間】としての、僕たち

そして、この動物としての土台が、盤石に固められて、初めて。 僕たちは、より高次な人間的な欲求を抱く資格を得る。

• 社会的欲求： 集団に、所属し、仲間が、欲しい。
• 承認欲求： 他者から、尊敬され、認められたい。
• 自己実現欲求： 自らの、可能性を、最大限に、引き出し、あるべき、自分に、なりたい。

僕たちが犯している致命的な過ち。 それは、このピラミッドの存在を無視し、腹を空かせ、寝不足で、そして、来月の家賃に怯えている、飢えた“動物”に対して、「さあ、自己実現しなさい」と、無責任な説教を垂れていることなのだ。

飢えた動物に詩が書けるか。

答えは否だ。

僕の戦略：まず“動物”としての、自分を、満たす

だから、僕の人生戦略は極めてシンプルだ。 まず、僕の内なる“動物”を完璧に満たし黙らせる。

その盤石な土台の上で初めて「人間」としての高尚なゲームを始める。

僕が、このブログでこれまで執拗なまでに語り続けてきたことは、すべてこの動物としての「土台作り」に集約される。

①「生理的欲求」の、最適化

• 睡眠： 僕が、枕や耳栓アイマスクに投資し、8時間の睡眠を死守するのは、それが最も根源的な生命維持活動だからだ。
• 食事： 僕が、「白い悪魔」を、食卓から追放し、「黒い救世主」を崇めるのは、僕の動物としての肉体を最高のコンディションに保つためだ。
• 運動： 僕が、筋トレを続けるのは、生存競争を勝ち抜くための動物としての「強さ」を手に入れるためだ。

②「安全の欲求」の、盤石化

• 経済的安定： 僕が、給与のほとんどを積立投資に回し、4000万円という資産を築き上げた唯一の理由。 それは、僕の内なる動物から「飢え死にするかもしれない」という根源的な恐怖を、完全に消し去るためだ。 僕の資産は、僕の精神を守る、最強の「防波堤」なのである。

この二つの土台が、完璧に満たされて初めて。 僕は安心してMBAで学んだり、このブログで哲学を語ったりという、人間的な「遊び」に、興じることができるのだ。

結論：君が、まず、やるべき、たった一つのこと

もし、君が今「崇高な夢」と「変わらない現実」のギャップに、苦しんでいるのなら。 一度、その視線を空の上から自らの足元へと戻してみてほしい。

そして、君の内なる“動物”に静かに問いかけてみてほしい。

「君は、今、本当に、満たされているか？」と。

• 睡眠は、足りているか？
• 身体が、喜ぶ、食事を、摂っているか？
• そして、経済的な、安心感は、あるか？

もし、その答えが「NO」であるならば。 君が今やるべきことは、新しい自己啓発書を読むことではない。 君がまずやるべきは今夜、いつもより、30分、早く、眠ることだ。

そのあまりにも地味で退屈な一歩。 それこそが、君の人生という名の壮大なピラミッドを築き上げる、最も重要で、そして最も確実な礎となるのだから。